京都と寿司・朱雀錦
(26-1)西芳寺関連・コケ植物
 
26-1西芳寺関連コケ植物
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コケ植物

 日本の地形は南北に長く、多雨であり、海岸から標高3000mを越す高山まで、多様な環境があ
って、世界でも有数のコケ(蘚苔)植物の豊富な国である。 そのため日本では西
芳寺等コケ植
物を庭園に植えて鑑賞するという世界でも珍しい文化も発達した。 
 日本コケ植物の分類学的研究は、17世紀に欧米の研究者によって始められた。 コケ植物の出
発点はヘドウイッヒ
JHedwig1801年の文献Species Muscorunであるが、そのなかにも日本産の
コツリガネゴケが載っている。 その後
1850年ごろから日本から運ば れた標本を基に多くのこけ
植物が欧米の研究者によって学名が付けられ報告されたが、日
本人による研究が始まったのは、
20
世紀になってからである。
 しかし、日本における戦後のコケ学の発展は目覚しく、多くの研究の努力により、現在では日
本に生育するほぼ全ての種が確認されており、多くの文献が出版されている。 



           第1 コケ(蘚苔せんたい)植物とは
 現在の植物で言う蘚苔植物は、スギゴケに代表される蘚類せんるい、ゼニゴケの仲間の苔類たいる
、ツノゴケ類の3類(綱)を含んでいる。 
 陸上植物を大分類すると、隠花いんか植物と顕花けんか植物に別れ、花の咲かない隠花は蘚苔類とシ
ダ類に別れ、花の咲く顕花植物は被子
ひし植物と裸子らし植物に分かれる。 
 水中で進化した植物のうち緑藻類りょくそうるいの一部が、4億年前以上前に陸上に進出し、現在のよ
うな多様な植物に進化したと考えている。 そのような初期の陸上植物の一つが
コケ植物の祖先
であると考えられる。 現在陸上に生活する植物には、顕花植物とシダ類、
蘚苔類がある。
 顕花植物とシダ類の茎にはどちらも維管束
いかんそく(柱状繊維束で動物の背骨に相当する物)
があり、維管束植物と呼ばれることもある。
 蘚苔類の造卵器は長い頸を持ったフラスコ状であ
るが、これはシダ類の造卵器と良く似
ているので、シダ類と蘚苔類を合わせて造卵器植物と言う
ことがある。 
 蘚苔類は蘚綱、苔綱、ツノゴケ綱の3群に分けられる。 

 綱の検索表
A.     植物体(配偶体の本体)は茎葉状。 仮根かこんは多細胞。 原糸体げんしたいは良く 
 達する。 
さくに弾糸だんしはない。 剳ソさくへいはかたくて丈夫。
  凾ヘ帽に覆われる。                      ・………    蘚綱
A.植物体は茎葉状又は葉状。 仮根は単細胞。 原糸体はあまり発達しない。 剳ソは
  あればやわらかく、ないこともある。 凾ノ弾糸がある。 帽がない。 

 B.植物体は、茎葉状または葉状。 葉緑は小さい。 ピレノイドはない。 油状があ
   る。 剳ソがあるがやわらかい。 刹形で、気孔も軸柱もない。 
剳ヌはふつう
   縦に4裂、又は不規則に裂ける。
        ………………………………… 苔綱
 B.植物体は葉状。 葉緑体は大きい。 ピレノイドがる。 油状体はない。 
    剳ソはなく、凾ヘ角状で気孔があり、軸柱がある。 剳ヌは普通縦に2裂する。
                     …………………………………………ツノゴケ綱


        表1 日本産コケ植物の分類表(2000.12現在)と西芳寺のコケ

分類

科数

属数

種数

西芳寺のコケ種数

蘚苔植物門

109

442

1665

119

蘚綱

61

305

1030

 76

 ミズゴケ亜綱・ミズゴケ目

  1  

  1 

35 

     1

 クロゴケ亜綱・クロゴケ目

  1  

  1 

   2 

 

 ナンジャモンジャゴケ亜綱・目

  1  

  1 

   1 

 

 マゴケ亜綱

58

302

992

 

  ミツバゴケ目

    1

    2

      3

 

  キセルゴケ目

    1

    3

12

     1

  スギゴケ目

    1

    5

29

     4

  ホウオウゴケ目

    1

    1

42

     4

  ツチゴケ目

    1

    1

      1

 

  シッポゴケ目

    5

37

121

     5

  センボンゴケ目

    3

30

99

     5

  キボウシゴケ目

    2

    9

52

     4

  ヒョウタンゴケ目

    4

12

21

 

  ヒカリゴケ目

    1

    1

      1

 

  ホンマゴケ目

    9

28

118

     9

  タチヒダゴケ目

    1

10

32

     2

  イヌマゴケ目

13

45

98

     6

  アブラゴケ目

    3

11

22

 

  シトメゴケ目

12

107

341

31

苔綱

46

131

618

 42

 ウロコゴケ亜綱

37

113

579

 

  ウロコゴケ目

27

97

521

33

  コマチゴケ目

    1

    1

      2

 

  フタマタゴケ目

    9

15

56

     4

 ゼニゴケ亜綱・ゼニゴケ目

   9  9

18

39   39

1      5

ツノゴケ綱・ツノゴケ目

2

6  6

17     17

     1

 

 

 

 

 



   第2蘚類の生活史と形態

 蘚類は胞子で繁殖し、明瞭な世代の交代えをする。 胞子は普通10〜30μm(μm=10-3mm)くらいの小さな
球状の細胞である。 風などで運ばれた胞子は適当な場所に落ちると、水分を吸収して発芽する。 蘚類の場合
、発芽した胞子は分裂を繰り返して、普通細かい糸状の原糸体となり、盛んに分枝する。 原糸体の各々の糸は
肉眼では見えないほど細いが、そのものを緑色で覆うようになる。 続いて原糸体の上にいくつかの小さな芽が
分化し、この芽が成長して、緑色の葉や茎を持った(配偶体の本体)となる。 こうして出来た植物には、やがて雌
雄の生殖器官、即ち造卵器や造精器ができ、その中に配偶子である卵細胞や精子ができる。 我々が見る緑色
の葉や茎を持つコケの体は、造卵器や造精器をつけ、配合子である卵細胞や精子をつくるので、配偶体と呼ばれ
る。 精子は2本の鞭毛をもち、雨の日などに、水中を泳いで卵細胞に達し、受精が行われる。 受精によって出
来た接合子は、分裂を繰り返し、成長して胞子体をつくる。 胞子体、若い間は、葉緑体を持っているが、独立して
生活できず、配偶体の上で寄生状態となっている。 胞子体の下部は、剳ソとよばれる柄で、その頂端に凾ェあ
り、凾フ中で行われる減数分裂の結果、多くの胞子が出来る。 胞子はやがて凾ゥら出て地上に落ち、発芽して
原糸体となる。 このように葉や茎を持つ配偶体世代と胞子を作る胞子体世代が繰り返される。 蘚類の配偶体
は一般に多年生であるが、少数の種に一年生がある。

                      コケ(蘚苔類)の生活史
   ┌  配偶体の本体(植物体)┬→造卵器→ 卵細胞→┬  (受精)接合子
   ↓      ↑      └→造精器→ 精 子→┘       ↓
  無 性芽 → 原糸体 ← 胞 子 ←(減数分裂)胞子母細胞  ←  

 * 配偶体世代(n)  * 胞子体世代(2

 通常我々の周りにある顕花植物やシダ植物の葉や茎が複相(2n)であるのに対し、コケ(蘚苔類)植物の葉や
茎が単相(n)であることは、両者を区別する大きな特徴である。

1.生殖器
 a・ 造卵器 蘚苔類のには細い頸部があり化学実験に使うフラスコのような形をしている。 茎葉状の種では普
   通茎や葉の頂端に着く。 普通の長さは100μm前後。
 b・ 造精器 壺状で内部に多くの精子ができる。 造卵器と同様な場所にできる。
2. 雌雄性 蘚類の雌雄は複雑、各種の組み合わせがある。
3. 原糸体 蘚類の胞子は、適当に湿ったところで発芽すると、糸状の原糸体となる。 原糸体は小さいため我々
 の目に触れることはすくない。 蘚類の原糸体は一般に横に這って枝別れし、それぞれの糸は、多細胞で仕切
 り(細胞壁)がある。 原糸体は成長すると糸の処から芽が出来、其れが成長すると蘚ななる。
4. 仮根 蘚類の茎の下部には、1列の細胞からなる糸状の仮根があって、基部に付着する。 仮根は、目にみ
 えないほど細い糸で、維管束植物の根とは形や働きがまったく異なる。 普通は褐色で、しばしばフェルト上に
 集まって茎の中部までを覆うことがある。
5.毛葉 蘚類の多くの種では、茎や枝の表面に毛状あるいは小さな葉状をした毛葉がある。
6.葉のつき方 大部分の蘚類では、葉は茎や枝の周りに螺旋状につく。
7.葉の構造 葉の形態は蘚類の種を分ける祭の最も重要な形質の一つである。
 a・葉の形 蘚類の葉には色々なかたがある。
 b・中肋 葉の中央には普通基部から葉先の方向に長筋のよう中肋ちゅうろくがある。 
8.帽 蘚類に帽は造卵器の中の卵細胞が受精い、若い胞子体が成長するにつれて造卵器の腹部の壁が胞子
 体と共に持ち上げられ、凾フ頂部にやっと載っている小さな物。
9.無性芽 蘚類の中には有性生殖以外に無性生殖を行う種も多い。 多くの種では、葉などが落ちると、それか
 ら新しい個体ができることがある。 
10・
  蘚類の大部分を占めるマゴケ亜綱の胞子体には、普通長い柄(剳ソ)があり、その上部は胞子を入れる凾ニ
 なっている。 凾フ先端は蓋となり、蓋の落ちた後の開口部には剋浮ウくしと呼ばれる特殊な構造をもった歯を
 並ぶ。 
 A・剳ソさくへい 剳ソの長さは一般に0.5〜5cm位である。  剳ソは成熟すると褐色でかたくなる。
 B・凾フ形 球形、ヘチマ形、細長いもの、色々の形状がある。  蘚類の大半を占めるマゴケ亜綱の種の凾ヘ
   縦断面で見ると、壺とその下の剳ソに続く頸部、それに頂端部に分化する蓋の3つの部分からなっている。
   凾フ内部の中央には、普通縦に太い軸柱があり、胞子は軸柱を取巻くふくろである胞子室で胞子母細胞が
   減数分裂を行うことによって造られる。 
 C・蓋 蘚類の多くの群では、凾フ頂端に蓋(刳W)が分化している。 
 D・口環 蓋の下端と壺との境界にはしばしば口環と呼ばれる帯が分化します。
 E・剋普@マゴケ亜綱では凾ゥら蓋が分離すると、凾フ開口部の内側に細長い歯状の構造物が並んでいるのが
  見える。 これが剋浮ウくしで、剋浮ヘ構造や発生の上から2群に分けることが出来る。 その一つは、多くの
  細胞が集まって一つの剋浮構成もので「スギゴケ型」であり、もう一つは剋浮構成する細胞壁の一部から
  なる「マゴケ型」である。
11・胞子 
  若い凾フなかでそれぞれの胞子母細胞が減数分裂を行うと、4個の胞子が出来る。 4個の胞子は中心部で
 互いに接している。 それらの胞子が離れたとき、個個の胞子はみる方向によって型が異なることが多い。 胞
 子の大きさは10μm以下の小さい物から100μmを超す大きなものまである。 胞子の数については、いくつか
 の報告がある。 アジアの熱帯に生育するネジクチスギゴケの1種の8000万個からすくないものでミヤコノツチゴ
 ケの8〜20個まで、様々である。


          第3 日本の野生植物「蘚苔類」
蘚類
ミズゴケ亜綱
 世界に1科1属150種が、日本には約35種が記録されている。 
1・ミズゴケ科(1属35種)
    茎は直立し、1〜数層の薄壁透明の表皮が内部の木化した表皮を覆う。 枝は開出枝と下垂枝があり、表
  皮細胞は時にレトルト細胞(フラスコ状細胞)が発達する。 葉は普通茎葉と枝葉の別があり、形と大きさが異
  なる。 葉身細胞には葉緑細胞と透明細胞とがある。 透明細胞は普通小孔が多い。
   熱帯から寒帯に分布するが、特に北半球の冷温帯に多い。 湿地に多くの種が生育する。 特に、寒冷地で
  は、ミズゴケ類を中心として湿地に生育する植物遺体が積み重なっても分解せず、次第に厚い層を形成するよ
  うになる。 このように盛り上がった湿地を高層湿原と言う。 
   ミズゴケ類はコケ植物の中で群を抜いて実用的価値が高い。 葉に水を蓄える細胞が多数あるため、乾燥さ
  せれば、多孔質の軽くて弾力のある素材なり、梱包財や園芸用として用いられる。 
   また、寒冷地では、湿地生物の遺体が体積して厚い層を作る。 是が低温のために容易に分解せず。次第
  に炭化したものが泥炭と称する。

2・ クロゴケ亜綱クロゴケ科(1属2種)
    蘚類の中では原始的と考えられているぐんで、世界に1科2属100種が知られている。 日本では1属2種
  が生育する。  配偶体は黒味を帯びる。 日本では普通高地に生育する。 希少種で、ガッサンクロゴケは
  環境庁の絶滅危惧T類の指定を受けている。

3・ ナンジャモンジャゴケ亜綱
   世界に1科1属2種が知られ、日本には1種が分布する。 
  属の発見者は高木典雄名古屋大学教授。 昭和27年(1952)北アルプスの餓鬼岳がきだけで採取し、服部植
  物研究所に同定を依頼した。 ナンジャモンジャゴケの名付け親は服部新佐所長である。 顕微鏡を覗いて蘚
  苔類のようにみえるが、その特徴は蘚苔類と異なる、菌類、シダ類、地衣類などでもなさそうであるが、ひとま
  ず「ナンジャモンジャゴケ」と仮の名をつけ、各方面の学者に確認するも、皆が「自分の研究分野の物でない」
  と言う返事であった。 その後、服部氏が研究を重ねるうちに、これは世界で一番原始的な蘚苔類、即ち世界
  で一番原子的な植物であることが分かった。 そして蘚苔類の中に新たな1目1科1属1種が加えられた。 こ
  れは、蘚苔類学上、今世紀最大の大発見だった。 昭和33年(1958)ナンジャモンジャゴケは仮の名から正式
  の名になり学会で発表され世界的な注目を浴びた。   絶滅危惧T類
 
マゴケ亜綱
 蘚類の大部分の種はこのマゴケ亜綱に属する。 90を超える科があり、650以上の属と1万に近い種が記録され、多くの多くの目に分けられている。 日本からは15目58科302属約1000種が記録されている。 
4・ ヨツバゴケ目 1科2属3種
   茎は直立している。 「ヨツバゴケ」「アリノオヤリ」等がある。

5・ キセルゴケ目 3属12種 直立
   日本には3属12種が知られている。 キセルゴケ属(2種)、 イクビゴケ属(8種)、クマノゴケ属(2種)。 イ
  クビゴケが盆景に利用される。 小型であまり群にならないためコケ庭には利用できない。 凾フ形が大変変
  わって面白い仲間です。 イクビと言うのは、凾フ形が「猪の首」のように見えるからです。 茎が短くて、その
  茎から四方八方に広がるようにして細長い葉が出てきます。 その真ん中に猪の首を据えたような凾ェでて
  います。 剳ソほとんど伸びない。 このため、凾ェあると麦粒をばら撒いたように見える。

6・ スギゴケ目 1科6属」29種 直立
   スギゴケの植物体は杉の芽生えのような形をしている。 茎が伸びて、短いものでは1cmにも満たないが、
  大きい 物は数cmの高さになる。 上から見ると、細い針状の葉が 四方八方に広がっている。 もし胞子体
  が付いている時は茎の先端から茶色の針金のような剳ソが2〜3cmほどの高さに伸びて、その先端に円筒形
  か四角に角ばった形の凾付ける。 コケ庭にはコスギゴケ オオスギゴケ、スギゴケ ウマスギゴケ、チャボ
  スギゴケ、タリゴケ、がある。 特にオオスギゴケは庭の王様で大抵のところでよく使われています。是が大き
  な群れで生えていると、いわゆるモスグリーンのきれいな絨毯のように見えます。

7・ ホウオウゴケ目 1俗42種 直立
   葉は左右2列に規則正しく並び、葉の基部の腹側は二枚に別れ、あやめの葉のように茎を抱く。 この属で
  はトサカホウオウゴケ、ホウオウゴケ、ナガサキホウオウゴケが盆景よく使うがや小規模なコケ庭にも使うこと
  がある。 トサカホウオウゴケは山地のやや乾き気味の林の中の土上、岩上などでよく見られ、半日日陰地を
  好みます。 植物体は斜めに立ち上って生え、長さは3cm内外、緑色か、時に少し黄褐色をおびている。  茎
  はトサカホウオウゴケ殆ど土の中に入らず、仮根もわずかです。

8・ ツチゴケ目 1科1属1種 直立
   ミヤコノツチゴケ1種、庭園や裸地に生える。

9・ シッポコケ目 5科37属121種 直立
   葉が細長くて、1本の茎全体が動物の尻尾のような仲間で5科がある。
 (1) キンシゴケ科 8属18種 直立
    葉は普通広い基部から長く針状に尖がり、先端部  に細かい刃がある。 中肋は普通強壮。  ヤノウエ
   ノアカゴケ、キンシゴケ、コキンシゴケモドキ、ヒメキンシゴケが盆景や盆栽に利用できるヤノウエノアカゴケは
   直射日光がよく当たるような、開けた場所の土上、藁葺き屋根の上などに、大きな群になって生える。 都会
   でも 日当たりのよい庭などにはよく生える。
    植物体は小さく、茎はながさ、1cm以下で、直立している。 ほとんど枝別れしません。 茎の基の方には茶
   色をおびた仮根が多くつく。 葉は小さく細長い三角状で、長さは1o前後。春から秋にかけて多くの凾つ
   ける。 凾ヘ長さ1cm内外の赤紫の柄を持っているため、コケの生えている場所全体が赤紫色になる。 
   凾つけない小さな植物体は、盆景や盆栽に利用できる。
 (2) エビゴケ科 1属1種 
    エビゴケ1種。 葉は規則正しく2列につけ、植物体は小さなエビに似る。 葉の基部は二枚になってホウオ
   ウゴケの葉のように茎を抱く。 
 (3) キヌツボゴケ科 3属10種
    植物体が肉眼で判別できないほど微小。 希少種が多い。
 (4) シッポゴケ科 24属85種 
    茎は立ち、葉の基部は広くて多少鞘状になり、葉身部は普通針  状にのび、なか肋は長い。 
    ススキゴケ、ヤマトフデゴケ、フデゴケ、ユミゴケ、シシゴケ、が園芸用としてつかわれる。 ススキゴケは山
  地の道沿いの土上や岩の上にたまった土の上に密生する小さなコケ。 あまり日陰を好まず、やや木陰になる
  ような所で、半湿地でよくみかける。 緑色か黄緑色の塊となってはえる。 茎は1〜2cmの高さにまりますが
、 基の方は互いに絡み合った仮根を持って、やや土の中に入っている。 葉は細長くのびて毛状となり、やわら
  かい感じになる。 園芸関係者の間では、ススキゴケ、キンシゴケ等の仲間をヒナタゴケと呼んでいる。
   ススキゴケは、盆景や盆栽の下植に利用される。 大体が塊りになって生えますので、採るときに、この塊り
  を崩さないでとる。
 (5) シラガゴケ科 1属7種 
    野外は白っぽく厚い葉をつけ、固まって生えることで、容易に識別できる。 葉の中肋はよく発達する。 こ
  の仲間では、ホソバシラガ(オキナ)ゴケ、アラシラガゴケが園芸用に使用されている。
    ホソバシラガゴケは、山地の樹の根もと、土の上、腐植土、の上などに白緑色の大きな塊りをつくって生え
  ます。 直射日光のところには生えなく、半日陰の所で湿気のある場所を好みます。 植物体は長さ2〜3
  cmで直立か斜めになって生えるが、普通の場合は、数本から10数本が一塊となって半球状のものを作りま
  す。 仮根はほとんどない。 葉はほとんど茎にそって密につき、凾ヘめったにつけない。 ミズゴケと共に、園
  芸店で「ヤマゴケ」という名で売られ、ミズゴケと同様保水用材として広く使われているその他、コケ庭とか鉢
  物、盆景などにはこのコケがふんだんに使われています。 また、西芳寺コケ庭の主要なコケであり、コケ庭
  の三要素の一つである。 

10・ センボンゴケ目 3科30属99種 直立
   センボンゴケ科を中心とした仲間。 乾くと葉が巻き、乳頭があるためにやうあくすんで見える。
 (1) センボンゴケ科 25属81種 
    直立する茎が密な固まりを作って生育することが多く、葉身細胞に  乳頭がでるものが多い。 全国各地
  の日当たりがよく乾燥しやすい岩  上、土上に生育する。  ツチノウエノコゴケ、ハマキゴケ、ネジクチゴケが
  園芸用に用いられる。
   ツチノウエノコゴケは、庭、草原、芝生のわきとか岩の上、兵の上など、いり色な所によく生え、日当たりのよ
  い所から、半日陰地にまで見られる。 植物体は小さく、高さは5o程度で、茎はほとんどないくらいに短いの
  で、葉が土のうえに直接に束上になったように見える。 凾ヘよくつき、長さ1cm内外の柄をもっている。 盆
  栽の下植や盆景につかう。
 (2) カタシロゴケ科 4属14種 
   樹幹に着生することが多い。 葉の基部は幅広く、中肋の両側には短形〜方形の大 型で透明
 な細胞からなる網目組織があることが特定である。 太平洋がいの温暖地の
樹幹基部、腐木上
 に生育する。
 (3)     ヤリカツギゴケ科 1属4種
  円筒状の特異な形の帽を持つ。 高山の石灰岩地で日陰の岩上や岩隙土に生える。極希少種
 (4)     カタシロゴケ科 4属14
   樹幹に着生することが多い。 葉の基部は幅広く、中肋の両側には短形〜方形の大 型で透明
 な細胞からなる網目組織があることが特定である。 太平洋がいの温暖地の
樹幹基部、腐木上
 に生育する。
(5)     ヤリカツギゴケ科 1属4種
   円筒状の特異な形の帽を持つ。 高山の石灰岩地で日陰の岩上や岩隙土に生える。極希少種

11・ キボウシゴ目2科9属52種 直立
   キボウシゴケ目を中心とし、凾フ形と帽の形が近似している仲間。
 (1) キボウシゴケ科6属46
   葉は茶褐色、卵状針形、葉の先端に透明な葉先や大きな剋浮もつことが多い。 日当り
  のよい岩上や土上に暗緑色の固まりや大きなマットをなすことが多い。 スナゴケ、シモフ
  リゴケ、クロカワゴケ
が園芸にもちいられている。
   スナゴケは川原などのような、開けた場所の砂質土や、岩の上にたまった砂質土などは多
  少水気がある方がよく生育する。
   植物体は黄緑色で、時に表面が白っぽく見えることかある。 茎は3〜5cmの長さで、不
  規則に枝分かれするが、枝は短く、葉が密についている。
 主に盆景の景観づくりにつかわ
  れます。
 (2) ヒナノハナゴケ科 3属6種
   胞子体をよくつけ、マットのあちこちに釣鐘状の凾ェ見える。 樹幹に薄いマットをなすことが多い。

12・ ヒョウタンゴケ目4科12属21種 直立剳ソ剳ソ剳ソ
  ヒョウタンゴケ科を中心とした仲間。 特殊な環境に適応したものが特異な形状の凾もち、別科とする。 
 (1) ヒョウタンゴケ科 4属7種
   植物体は微小〜小型。 葉は柔らかく、1本の中肋をもつ。 全国各地の湿土上に生える。 ヒョウタンゴケ、
  ヒロクチゴケ、ツリガネゴケ園芸用に使われる。
   ヒョウタンゴケは庭土、道端の土上、火  事の焼跡、焚き火の跡などに大きな群になって生えます。 日当り
  のよい所から、やや日陰までよく生えます。   植物体は緑色で、小さく、高さは1cm以上、茎は極短く、ほと
  んど見えないくらいです。 凾ヘよく付けるのでよく目立つ。 凾フ柄は1〜5cmで、黄色をしているが、古くな
  るとか褐色をおびてくる。  盆栽の下植や盆景に利用して室内に置くと長持ちする。
 (2) カゲロウゴケ科 2属5種
   植物体は微小。柔らかい葉の間に丸い凾ェつく。 本州以南、干上がった池や田の土上にはえる。
 (3) ヨレエゴケ科 1属1種
   原糸体のマット上にちいさな植物体がまばらに出る。 北海道の1箇所採取されたことがあるだけ。 珍種。
 (4) オオツボゴケ科 5属8種
   凾ヘ直立し、頸部が長く伸びたりふくらんだりする。 高山で、糞や小動物の死骸上に成育する。 希少種で
  ある。

13・ ヒカリゴケ目1科1属1種 直立
   光るコケとして有名。 ただし、コケ自身が発光するのではなく、太陽の光を反射してて光ります。 ヒカリゴケ
  は中部以北の亜高山帯の窪みや洞の入り口付近、土上に生育する。  絶滅危惧T類

14・ ホンマゴケ目9科28属118種 直立
   ハリガネゴケ科を中心とする目であるが、形態的にやや、異なる3科(ハリガネゴケ科、チョウチンゴケ科、
  タマゴケ科)からなる。 この3科にほかに、全国各地でよく見られるのは、ヒノキごゴケ科である。 残る5科は
 、特殊な環境に生育するため、まれにしか見ることができない。
 (1) ハリガネゴケ科 9属69種 直立
    葉は乾くと茎を蒔くようにややねじれ、凾ヘ下方に傾いたり垂れ下がることが多い。 全国各地、土上や岩
  上に生える。 ハリガゲゴケ、オオカサゴケ、カサゴケモドキが園芸に用いられる。
    オオカサゴケは山地の湿気の高い谷沿いなどにある林の中の、腐植土がよくたまった地上に生えます。 
  杉の林の中などに生える。 植物体はやや大形で、緑色がこく、散生的に腐植土上に葉を広げます。 茎は、
  地下を横に這う葡ふく茎があり、この茎は長く、仮根多く付ける。 この葡ふく茎の先が立って、地上に出て直
  立茎となり、そのもとの方から再び葡ふく茎が出る。  葉は直立茎の先の方に集まってつき、直立茎の下の
  方の葉は殆どうろこ状になる。 葉は大きく、1〜2cmの長さ、傘を広げたように、横に開く。 盆景に用いる。
 (2) チョウチンゴケ 7属32種 直立
   卵形〜長楕円形の大きな葉を広げていることが多い。 蘚は提灯をぶら下げた様に付く。 全国各地、湿っ
  た土上岩上や腐木上に生える。 ツボゴケ、コバノチョウチンゴケ、エゾチョウチンゴケ、ツルチョウチンゴケ、オ
  オバチョウチンゴケが園芸用に用いられる。
   コツボゴケは半日陰地の湿気の多めな地上、岩の上などに群生し、うす緑色の絨毯のようになる。 植物体
  はうすい緑色(モスグリーン)、茎は地上に這う茎と直立する茎があるが、横に這う茎の方が沢山できる。 こ
  の茎は、弓状にまがり、先が土に着くと、この部分に少し仮根を出して、新しい茎を伸ばしていきます。 直立
  茎は高さ2〜3cmでこの先に凾つける。 コケ庭に使われるほか、盆景の景観造りにも重要。
 (3) ヒノキゴケ 1属2種 直立
   数センチの高さになる美蘚の一つで、多くの細長い葉は乾くと房状になる。 本州以南、林床や 樹幹基部
  に固まりをなして群生する。  ヒノキゴケは山地の半日陰地ヒロクチゴケの腐植土上に大きな、こんもりした塊
  りとなって生える。 谷沿いの林の下など、割合に空中湿度の高い場所の林の中を好む。  植物体は濃い緑
  色で、少し褐色を帯びます。 茎はほぼ直立して生え、枝分かれは殆どなく、上の方以外には前面に褐色の仮
  根が密生し、この仮根で互いに絡み合って、大きな塊をつくる。 葉は細長い針状で、茎から殆ど横に広がり、
  茎の中部で最も長く、1cm前後の長さとなる。 全体として、やわらかい、動物の尾のような感じをあたえる。
 ヒノキゴケはオオスギゴケ、ホソバシラガゴケと共にコケ庭の三要素です。 濃緑 色で、やわ
 らかい感じの大形のコケで重宝がられている。 コケ庭に使う他、ヒノキ
ゴケは大形に盆景に
 も利用される。 
  ヒロハヒノキゴケはヒノキゴケに似るがやうあ小型である。
 (4) タマゴケ科 9属69種 直立
   球形の凾つける、葉身細胞が乳頭を持つことが多い。 全国各地、岩上や土上に生え
  る。 タマゴケコツクシサワゴケサワゴ
が園芸用に用いられる。
   タマゴケは山地の、やや明るい林の中やはやしのへりの土の上、岩の上などに大きな群に
  なって
生え、湿気の多い場所を好む。
     植物体は黄緑色で、茎は直立し、長さ4〜5cm枝は殆ど無い、茎の殆ど前面に褐色の仮
  根を密生
して、この仮根で、植物体が互いにからみあっている。 葉は細長く針状で、やわ
  らかい感じがします。 長さ1
cm以下で、乾くと少しちじれたようになって巻き、茎の先に
  よく凾つける。  コケ庭にも使われるが、
大形の盆景にも利用されます。
 (5) ヒモゴケ 1属3種 直立
     葉身細胞は方形〜六角形で、中部に1個の乳頭がある。 中部以北の高山で湿った 土上に
  生育することが多い。 希少種

 (6) ホゴケ科1属3種 直立
   茎が這い、茎の左右にでる側葉と背面にでる背葉がある。 中部以西の暖地、湿った、岩
  上、土上や腐木上などに生える。 希少種

 (7) キダチゴケ 1属1種 直立
     大型で茎は立ち上がり、樹状に枝を出す。 沖縄のみ知れれる、湿った岩上に生える。
   極希少種
 (8) ヌマチゴケ 1属1種 直立
   葉が強く反り返る。 北海道高層湿原などの湿地に生える。 極希少種
 (9) クサスギゴケ 1属1種 直栗
   葉が開くとスギゴケの仲間に似る。 葉身細胞は腹面側で盛り上がる。 中部以北 の冷涼
  な石灰岩地で、岩棚の下などの湿土上に生える。 極希少種

15・ タチヒダゴケ目1科1032種 直立
  タチヒダゴケの種類の多くは、樹幹上や日当たりの良い岩上など、比較的乾燥した 環境下に
 生育している。 樹幹や枝上に丸い緑色の固まりを作っていたり、日当たり
のいい岩上に手を
 広げたほどの大きさで、茶色っぽいマットを作ったりする。

  園芸には不適種。

16・ イヌマゴケ目12科45属98種 直立
   13科もの多くの科があるが、水中や水辺(カワゴケ科)、林床の腐植土上、更に樹幹や岩上など乾燥し易い
   環境に特化した生態的に異なる3グループにわかれる。
 (1) カワゴケ科 2属3種 横伸び
    茎が長く伸び、葉は建てに折りたたまれることがおおい。 近畿以北に多い。水中や水際に生育する。
 (2) コウヤノマンネンゴケ科 1属2種 横伸び
    二次茎が立ち上がり、樹状に枝を広げる。 全国各地、林床の腐植土上や湿土上に生える。 コウヤノマン
  ネンゴケが盆景に利用されている。 コウヤノマンネンゴケは山地の林の下の腐植土上にまばらな群になって
  生えます。 あまり明るい林でなく、半日陰地から日陰の土地をお好み、湿気は多い方が良く育つ。 茎は、土
  の中を長く這って、いる葡ふく茎と、この先が立ち上がって直立茎となったものからできている。 
  直立茎の基の方からは再び葡ふく茎がでて、先へ伸びていきます。 葡ふく茎にはウロコ状の小さな葉がつき
  、仮根が多く付く。 直立茎の高さは5〜8cm程度で中程からたくさんの枝をだします。
 (3) フジノマンネンコケ科 1属1種 横伸び
    フジノマンネンコケは山地の林の下の腐植土上に群れになって生える。 大体、標高二千メートル位の針
   葉樹林内に多くみられる。 茎の状態はおおよそコウヤノマンネンゴケと同じで、地中を長く横に這っている
   葡ふく茎と、これから直立している直立茎があり、直立茎は高さ4〜7cmになる。 直立茎の上半部の枝分
   かれは多く、コウヤノマンネンゴケよりも枝はずっと密になり、太さも細くなります。 利用方法はコウヤノマン
   ネンゴケと同じ。 
(4) ヒジキゴケ科1属1種 横伸び
   ヒジキゴケは日当たりのよい岩の上や石垣に灰緑色のふわっとした塊をつくって生える。 茎の下の方は少
  し横に這っているが、中〜上部の方は斜めに立ち上がり、不規則に枝をだす。 仮根はほとんど出ない。 葉
  は卵形で2mm位の長さとなり、乾くと植物体はひも状になる。 凾ヘ小さく、茎や枝の途中に付く。 凾フ柄は
  短く、葉の間に隠れる。 盆景、特に石付盆景にもちられる。 庭の場合、大きな庭石につ
 ることがある。
 (5) イトヒバゴケ科 4属8種 横伸び
  二次茎が伸びて垂れ下がり、不規則に枝を出すことが多い。 凾ヘ包葉間に隠れる。 各地
 の樹幹や岩上に生える。
 (6)  イタチゴケ科 3属13種 横伸び
  二次茎は尾状で、先端が上方に湾曲する。 各地の樹幹に生える。
 (7)  タイワントラノオゴケ科 1属1種 横伸び
  大型でマツムラゴケに極似にするが、葉身細胞に乳頭がない。 中部以西の石灰 岩壁上に生
  える。 タイワントラノオゴケは類絶滅危惧T類

 (8)  ムナジゴケ科 3属6種 横伸び
   二次茎が不規則に枝を出すことが多い。 葉身細胞は乳頭をもつ。 中部以西に多い。
  樹幹基部や岩上に生える。
  (9)  ヒムロゴケ科 5属6種 横伸び
   二次茎が羽状、あるいは不規則に枝を出す。 葉身細胞は厚膜、平滑。 主に暖地の樹幹
  や岩上に生える。
  (10) ハイヒモゴケ科 1119種 横伸び
   二次茎がひも状又は平坦に葉を付け、長く垂れ下がることが多い。 葉身細胞に乳頭があ
  ることが多い。 中部以西の暖地で、樹幹、枝、岸壁に生える。
 (11)  ヒラゴケ科 8属25種 横伸び
    二次茎が平坦に葉をつけ、羽状、あるは不規則に枝をだす。 葉の先端は丸い。 各地の樹幹、岩上に生
   える各地の樹幹、岩上に生える
 (12)  オオトラノゴケ科 1属6種 横伸び
    二次茎が立ち上がり、樹状に枝を広げる。 各地の岩上に生える。  オオトラノゴケ、キツネゴケが園芸用
   に用いられる。 オオトラノゴケは郊外や山地の半日日陰地の岩の上、時には砂質の土の上になどに大きな
   群を造る。 あまり水分の多い所は好まない。 岩の上を這う細い茎と、これから5〜10cmの高さに立ち上が
   る直立茎がある。 直立茎の方は、羽状に枝分かれしており、枝の先の方は次第に細くなり、枝の中程が一
   番太くなる。  大型の盆景に使う外、庭などには垣根のそばとか庭石の周りにつかわれる。
 (13) トラノオゴケ科 4属7種 横伸び
     二次茎が丸く葉をつけ垂れ下がることが多い。 葉が円形〜楕円形で船状に窪み、葉先が短く尖る。 
   各地の樹幹部や岩上に生える。 ヒメコグサゴケが園芸に用いられる。 ヒメコグサゴケは山地の、湿気の
   多い谷川沿いなどの岩の上、樹の根元などに緑色のつやのある、大きな群になって生える。 岩の上など
   を横に這っている茎と、この茎から直立または斜めに立ち上がっている茎の両方があり、横には茎には葉
   がほとんどなく、仮根を持っている。 直立茎は高さ3〜4cmで、緑色、不規則に枝を出す。 葉は乾いた時
   もちじれず、横又は斜めに開いている。 凾ヘ時々つける。剳ソの長さ1cm前後で、やや赤みを帯びてい
   る。 盆景に使われる。

17・ アラブゴケ目3科1125種 横伸び
  三科間の形態的共通性は薄く、またいずれの科も特徴的な形態をしているので、別々のもの
 と考える方がわかり易い。
 (1) クジャクゴケ科 6属11種 横伸び
  2次茎が樹状に立ち、枝葉は平坦な羽状、茎の腹面には腹葉が並ぶ。 暖地に生育 する種が
  多い、岩や土の壁面や樹幹基部に生育する。 クジャクゴケが園芸用に用い
られている。
   クジャクゴケは低地や山地の湿度の高い林の中の岩の上、腐植土上など
に数本ずつ数個体
  ずつが集まって生える。 日陰を好み、日当たりのよい所は生えま
せん。 地下を短く横に
  這う茎があり、この茎には褐色の仮根がたくさんついている。 

     直立茎は1〜3cmの高さになり、上半部で羽状に枝分かれする。 枝は平らに並んで
  がるので、小型の団扇状の形に全形がなる。 形が面白く、色も綺麗な緑色ですの
で、小さ
  な鉢植えにするか、盆景にもちられる。
 (2) アラブゴケ科 6属11種 横伸び
   卵状楕円形の葉をやや平坦につけることが多く、葉身細胞が長六角になる。 暖地に生育
  するものが多い、水辺の湿岩や土壁上に生育する。

 (3)  ウニゴケ科 6属11種 横伸び
   茎が長く垂れ下がることと、凾ノ顕著な剳ヌや剳ソに顕著な乳頭が出来る。

18・ シトネゴケ目12107341種 直立
   主に配偶体の形状によって12の科に分けられている。
 (1) ヒゲゴケ科2属4種 横伸び
   植物体は微小で、細い糸状。 葉身細胞は1個の乳頭を持つことが多い。 各地の樹幹
  基部や腐木に薄いマットをなす。
 (2)  コゴメゴケ科5属10種 横伸び
   植物体は微小〜小型で、胞子体も小さく、高さが1cm以内。 各地の樹幹上でマット状に生
   育することがおおい。
 (3)  ウスグロゴケ科12属23種 横伸び
    葉身細胞が短く長六角形〜長菱形で、腔上の乳頭又は上端突起を持つことが多い。 各地の樹幹から垂
   れ下がったり、岩上でマット状になる。 暗緑色の群落になることが多い。
 (4)  シノブゴケ科15属53種 横伸び
   基礎木的又は不規則羽状に枝を出し、角状の毛葉を持つものが多い。 葉身細胞は短く顕著な乳頭を持つ
  ことが多い。 各地の土、岩、腐植土、腐木の上や樹幹基部に黄褐色でくすんだ厚いマットをなすことが多い。
    トヤマシノブゴケ、アオシノブゴケ、ヒメシノブゴケ、おおシノブゴケが園芸用に用いられている。
    トヤマシノブゴケは、山地の半日陰地から日陰地の湿った岩の上や砂質の土混じりの腐植土上などに大き
  な群で生える。 水気の多いところから、やや乾いたようなところにも生える。 植物は黄緑色か緑色、時に濃
  い緑色となります。 茎はほとんどが横に這っていて、長さは5〜10cmになる。 枝はたくさん出し、えだは一面
  に広がり全体として平らな感じがする。  庭や盆景に広く利用っされている。
 (5) ヤナギゴケ科13属39種 横伸び
   湿地に生育するものは茎が立ちあがる。 ほとんどの種が葉身細胞は細長い線状で乳頭を持たない。 各
  地の湿地や水辺など湿潤なところの土上や岩上に生えるミズシダゴケ、ヤナギゴケが園芸用に用いられてい
  る。
    ミズシダゴケは山地の水気の多い所の岩上や砂質の土の上に濃い緑色の群になって生える。 日陰地か
  ら半日陰を好み、谷沿いの流れの側などにとくに多く見られる。  茎は斜めに立ち上がり、長さ10cm内外に
  なります。 枝分かれが多く、羽状のえだを出すが、枝の長さは不ぞろいです。 茎の表面には小さな毛状のも
  のが、葉と一緒についています。 濃い緑色と、枝分かれの多いことからこんもりとした感じがするコケで、盆
  景によく買われる。
 (6) アオギヌゴケ科10属63種 横伸び
   茎が這いマット状に生育することが多いが、茎が立ち上がるものもある。 腔上に乳頭をもつものはなく、絹
  様の光沢のあるものが多い。 各地の岩上、腐植土、樹幹基部など。 潤沢な所から乾燥した所までさまざま
  な環境に生育する。 
   ハネヒツジゴケ、ネズミヒツジゴケ、アオギヌゴケ、ネノネゴケ、キブリオキナゴケ、ヶヒツジゴケ、ヒモヒツジゴ
  ケ、ナガヒツジゴケ、ツクシナギゴケモドキ、アラハヒツジゴケ、が園芸用に用いられている。
   ハネヒツジゴケは、低地から山地の岩の上や樹の根元などに群れになって生える。  やや日当たりの良い
  ところから、半日陰地にまで生え、水気の少ない所を好む。 植物体は緑色ないし黄緑色で、古い部分は、少
  し褐色を帯びる。 茎は横に這い、長いものでは7〜8cmになりますが、普通では3〜5cmくらいです。 全体
  に柔らかい感じがするやさしいコケで、手触りも羊毛の様に柔らかいので、「ヒツジ」と言う名がつけられている
  。 盆景に使うほか庭の築など処々に使われる。
 (7) ツヤゴケ科2属15種 横伸び
    茎は這い、ツヤのあるマットを作って生育することが多い。 凾ェ直立し、卵状〜円筒状。 外剋浮ェ細く、
  内剋浮フ発達が悪いことが多い。各地で、樹幹や木の根元、岩上に生える。 ヒロハツヤゴケが園芸用に用
  いられている。 
   ヒロハツヤゴケは低地から山地にかけてのやや日陰地の岩の上、樹に根もと、わら屋根の上などに黄緑色
  の、つやのある平らなマット状の群れになって生えます。 割合に日当たりの良いところでもよく見られるが、
  水辺など湿気の多い多いところでは生えない。  植物体は黄緑色で、茎は横に伏せてのび、長さ4〜5cmに
  なります。 枝は羽状に出るが、そんなに多くない。 葉は平らに茎に付き、葉は著しく中窪みに付きほとんど
  舟形になっている。 庭や盆景に使われる。
 (8) サナダゴケ科2属10種 横伸び
    凾ヘ細長い円筒状で、ややまがる。 枝は出ないことが多く、平坦に葉をつけることが多い。 各地の岩上
、 腐植土、樹幹基部などに平坦なマットを作って生育する。  オオサナダゴケモドキ、サナダゴケ、ユガミタチ
  ヒラゴケ、アカイチイゴケが園芸用に用いられる。 
   オオサナダゴケモドキは山地の半日陰から日陰地の岩の上、樹の根元・朽木の上などにやや小さなマット状
  の群れになって生えます。植物体は表面に少しつやがあり、緑色から黄緑色で、全体として平らな感じがしま
  す。 横にゆるく這い、時々斜めに立ち上がる枝を出します。 葉は乾いてもほとんど変わらず、平らに茎に付
  き、横に広がりますが、元の方が中窪みで、茎を包むように付きます。 盆景に用いられる。
 (9) ナワゴケ科2属5種 横伸び
   丸い葉をつけた二次茎が斜上し、黄褐色の密なマットを作ることが多い。 外剋蕪チ異な肥厚をする仲間で
   、葉の細胞壁を厚く肥厚する。 中部以西の太平洋岸沿いの暖地で乾燥しやすい岩上や樹幹基部に生育す
   る。
 (10) ナガハシゴケ科15属28種 横伸び
    つやのある、またはくすんだ黄褐色の群落を作ることが多い。 葉基部には顕著に膨らんだ細胞が並ぶ。 
  温暖地の枝上に小さな固まりとなって生育する物が多いが、巣埴土や腐木、樹幹基部、岩上でマット状に生
  育する物がある。 カガミゴケが園芸に用いられる。カガミゴケは山地のやや日陰地から半日陰地の根もと、
  岩の上、土上などにマット状の群になって生える。 植物体は黄緑色または緑色で、日あたるが少しよいとこ
  ろでは茶色を帯びることもある。 茎は少し横に這い、羽状に枝を出す。 
   枝は立ち上がらず、やや平らになる。 植物体全体に少しつやがあり、葉は乾いてもかわらず、横に開いて
  いるが、先の方は少し下向きに曲がる。 葉は卵形で先は細く尖る。 やや水気の少ない処を好んで生えます
  。 盆景や庭に利用されている。 このコケは全体に柔らかな感じがする。
 (11) ハイゴケ科21属79種 横伸び
   規則的羽状に枝を広げ、葉先が鎌状に曲がり、葉縁基部の翼細胞が顕著になることが多い。 各地で、種に
  よってさまざまな基物上に、平坦なあるいは厚いマットを作って生育する。 ハイゴケ、ヒメハイゴケ、オオベニ
  ハイゴケ、フジハイゴケが園芸用に用いられている。 ハイゴケは低地から山地にかけて、日当たりの良い所
  からやや日陰の岩の上、土手、土の上などに大きな群になって生える。 水気は少なくても良いが、少し湿気
  の多いところでもよく育つ。  植物体は黄緑色からうす緑色。 茎はゆるく横に這い、長さ5〜8cm以上なるこ
  とがある。 ほぼ規則的に羽状枝を出し、枝の長さは1〜1.5cm位で、枝は体たいてい上に向かって少し巻くよ
  うにたち上がります。 葉は密についていて細長い卵型で、先の方に向かって細長く尖り、葉の中程から上は
  強く弓状にまがっている。 庭に広く使われている。 
 (12) イワダレゴケ科8属12種 横伸び
   大型の種が多い。 新しい茎は古い茎の途中より出て上方に伸びる。 山地から高山にかけて、岩上や腐植
  土、腐木上などに厚いマットの大群落を作ることが多い。


参考文献
 * 日本の野生植物「こけ」(平凡社)編集;岩月善之助
 * コケづくり(池田書店発行)編社;井上浩
 * レッドデーターブック西芳寺こけ植物調査 執筆者;長谷川二郎


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