朱 雀 錦
(4) 「寿司種・鱧」



                    鱧
 ハモ科は、ウナギ目に属する魚類の分類群の一つ。 ハモ科の魚類は太平洋・インド洋・大西洋など、全世界の熱帯・亜熱帯の海に広く分布し、日本の近海からは3属4種が報告されている。
 海底の近くを遊泳して生活する低生魚のグループで、淡水・汽水域に進出することもある。
(1)分類(脊索動物門脊椎動物亜門条鰭綱新鰭亜綱カライワシ上目ウナギ目アナゴ 亜目)
  ハモ科の体系において6属15種が認められている。 本科はかってアナゴ科の一亜科とされてい
 たが、現在では独立の科として扱われるようになっている。 

  ◆シシハモ属      ・シシハモ
                                    Cynoponticus coniceps
                                    Cynoponticus ferox
  ◆ハシナガアナゴ属  ・ハシナガアナゴ
  ◆ハモ属       ・ハモ
             ・スズハモ
                                     Muaenesox yamaguchiensis
  ◆ワタクズハモ属   ・ワタクズハモ
                                     Gavialiceps arabicus
                                        Gavialiceps
                                      Gavialiceps
                                      Gavialiceps
  ◆Congresox属       Congresox talabon
                                      Congresox talabonoides
   Sauromuraenesox属 ・Sauromuraenesox
   ワタクズハモ属の5種は水深1200mにまで分布する深海魚である。 ハモ属・シシハモ属の仲間
 はほとんどが食用魚として利用され、底引き網。述縄などで漁獲
される。 

(2)生物学的特徴
  ハモ属の生物学的形態特徴は、体は著しく延長し、側扁そくへんする。 背びれは長く、鰓孔さい
 う
の上方から始まり尾ひれまで連続する。 胸鰭むなびれは大きく、鰭
きじょう数は1617軟条。 
 吻部ふんぶ(口先)から肛門までの距離(肛門全長こうもんぜんちょう
)は肛門から尾鰭おびれ後端まで
 の距離より短い。 吻部は延長し、上顎うわあご
は下顎より長い。 口は大きく、両顎には、犬歯状
 の歯が数列並び、前方のも
のほど大きい。 体は無鱗むりんで体表は円滑。 体側中央部に側線が走
 り、
146 154個の側線孔が開く。 体色は体側背部が黄褐色で、背方に向かうに淡くなる。 
 びれや尻ひれ、尾びれの縁は黒く縁取られている。

  日本近海及び我が国の主要漁場である東シナ海及び黄海に生息するハモハモ科魚類は、ハモとス
 ズハモの2種である。 ハモとスズハモは外見が非常に似ている
ため素人では判別が困難である。
 ハモとスズハモの判別方法は下記の通りである。 

  @ 肛門より前方の側線孔数がハモが4047に対し、スズハモは3338ある。
  A 肛門より前方の背鰭軟条数はハモが6678に対し、スズハモは4559と少ない。
  B 脊椎骨数は、ハモが142159に対しスズハモは128141とすくない。

(3)生育と産卵
  東シナ海産ハモの年齢別体長測定結果に基づくと、雌ハモ2歳魚の肛門前長は、11p、4歳魚で
 24
p、6歳魚で、34p、8歳魚で41pとなる。 雄の成長は、雌に比べて2歳魚まではわずかに早
 いが、3歳魚では逆に遅くなり、その差あ加齢
に伴って顕著となる。 従って雌は肛門前長60pを
 超えるが、雄は
40p以上に達する物はほとんどない。
  東シナ海の産卵場と産卵時期は、葉形仔魚ようけいしぎょ(レプトケファルス)による調査結果から
 、福建省(台湾近く)から舟山群島(上海沖付近)までの沿岸海域
が主産卵場と推定され、その海
 域で産卵時期は、4〜7月と推定されている。

  日本における産卵場は、紀伊水道、徳島県外海域、山口県周防灘、伊予灘等が確認及び推定され
 ており、それ等の海域で産卵時期は紀伊水道で6〜7月、周防灘、
伊予灘で、7月中旬〜9月下旬
 と推定されている。 なお、周防灘では、水深
4050mを中心とする砂泥又は泥質底域で実熟卵が
 確認されている。 

  東シナ海産ハモの成熟成熟(産卵可能)は、1951年頃、10歳魚で、60%弱であったが、1965
 1970
年になると4歳魚で60%、8歳魚では100%、全て産卵親魚となり早熟化の傾向を示した。 
 これは、ハモの資源量が
1960年頃を頂点として以下一貫して減少していることから密度効果による
 ものと考えられている。 成熟
した雌の孕卵数は2090万粒で、3歳魚で2025万粒、6歳魚で
 50
万粒前後、9歳魚で90万粒前後である。 

(4)鱧の生活と産卵
  鱧の卵は径1.52.2o(多くは1.61.8o)の分離浮遊性卵で、受精卵は、水 2022℃で63
 69
時間、水温2426℃で38時間で孵化する。 孵化直後の仔魚は全長3.13.4oで腹部に長い卵黄
 袋をもっている。 卵黄吸収後の仔魚は
葉形仔魚(レプトケファルス)へと成長する。
  ハモ科やアナゴ科」のうなぎ目に特徴の一つは、発生初期に葉形仔魚(レプトケ
ファルス)と呼
 ばれる発生段階を持つことである。 ハモの葉形仔魚は最大
100o程度まで成長する。 体高は体
 長の約
10%、細長く柳の葉のような形状をしている。
  ハモの雌雄比は一定ではない。 季節により、体長により異なっている。 季節 による変動を
 雌比率で見ると、夏季の7,8月が一番少なく(
40%)、その後雌の比率は増加し、1〜3月の冬
 季に最も高くなる(80%以上)。 また体長が大き
くなるほど雌の比率が増加し、肛門全長が40
 p以上になると
90100%が雌で雄はほとんどいなくなる。 これは性転換によるものか、現時点
 では確認されていな。

  ハモの食性は肉食性で、胃内餌生物の出現率はカニ類が最も多く33%、次いで魚類27%となり、
 その他エビ類、イカ類、シャコ類、タコ類、ナマコ類等となる。

 また、重量比でもほゞ同傾向でカニ類46%、魚類30.5%となっている。 餌生物の胃内出現割合は
 時刻によって相違し、魚類と甲殻類は日の出、日没時に、頭足類
は昼間に多く出現する。 また、
 摂餌の活発な時刻は、日の出、日没を挟んで1日
2回、6〜8時、1618時が認められる。
  ハモとスズハモの生息区域はほぼ同じで、重複する。 しかも、ハモとスズハモ
の見分けが非常
 に難しい。 それでは、どの程度の比率で生存しているのであろう
か、東シナ海で、葉形仔魚によ
 る調査では、ハモ
99.2%にたいしてスズハモは0.8であり、これは親魚の出現率と会うとのことで
 ある。 ある本によれば、スズハモ
は、ハモに比して味が劣り、蒲鉾等練り物の原料に回り、市場
 には出ないと記され
れいる。

(5)漁獲量
  イ)鱧の漁獲量と価格

年度

8年

9年

10

11

12

13

14

15

16

17

水揚量

1001

666

1117

991

1091

581

734

782

815

711

価格

963

1014

831

661

708

685

589

660

544

724

   年度;平成、水揚量;トン、価格;1s当たり円
 ロ)上表平成17年度水揚量の内訳
    太平洋中部(千葉県銚子〜三重県尾鷲)          …………  50
    太平洋南部(和歌山県勝浦〜宮崎県油津)      …………  168
                                        
内(愛媛県八幡浜)          …………(101
      日本海全区(青森県青森〜島根県益田)            …………    8
             東シナ海(山口県下関〜沖縄県石垣島)            …………  215
             瀬戸内海(大阪府泉佐野〜大分県別府)            …………  265
             合  計                                                         …………  711
 ハ)2002年の陸揚げ漁港順位
    1位 長崎県長崎港、 2位 徳島県椿泊漁港、 3位 愛媛県八幡浜港
            4位 福岡県博多港、 5位 山口県佐賀漁港
   東シナ海での底引き網による漁獲法は、195966年3万トン弱であったが、それ以後減少傾向を
 示し、
1983年には1万トン、1988年には5千トンを割り、199294近くまで低落し、同時に魚体
 の小型化、も進んでいる。 漁獲量の減少は続
199699年は650420トンの範囲にある。 こ
 の様に東シナ海での漁獲量の
減少は、資源量そのものの減少もあるが、漁船の操業域に生息してい
 たハモの主分
布が、操業域から外れる、深みに移動したことと、漁船の急激な減船が進んだこと
 主原因とみられている。


(6)鱧の栄養価
  ハモの可食部100g当たり12.7gの脂質が含まれる。 ハモに含まれる資質にDHA(ドコサヘキ
 サエン酸
) EPA(エイコサペンタエン酸)等の高度不飽和脂肪酸が27%程度含まれている。
 1)ドコサヘキサエン酸(DHA
   ドコサヘキサエン酸(DHA)は人間の体内では合成することが出来ず、食品から獲らなければ
  摂取出来ない多価不飽和脂肪酸の一つで、必須脂肪酸である。 
ドコサヘキサエン酸は脳や神経
  細胞の発育、機能維持に不可欠の成分で、脳細胞
に多く含有されている。 脳細胞のDHA量が減
  ると、機能が低下し、情報伝達
がスムーズに機能しなくなり、乳、幼児の脳や神経の発育の低下
  、老化による学
習能力や視力の低下を招く恐れがある。 その他、エイコサペンタエン酸(EPA
  )
と同様、血液の粘度を下げて流動性を高め、血栓が出来るのを防いだり、血液中の中性脂肪や
  悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やすなど
の働きがあり、動脈硬化、狭心
  症、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中、血栓性高脂血症、
高血圧、免疫性疾患と言った病気の予防、改
  善効果にも期待があるちょ言われて
いる。 
 2)エイコサペンタエン酸(EPA
   エイコサペンタエン酸(EPA)は血小板を凝集させる物質の生成を抑えて血液をさらさらにす
  る、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪酸を減らして善玉コ
レステロールを増やすなどの働
  きがあり、動脈硬化、脳梗塞、脳卒中、血栓症高
脂血症、高血圧と言った病気の予防、改善に役
  立つ。 

   近年、アトピー性皮膚炎、花粉症、気管支ぜん息などのアレルギー症状や、慢性気管支炎を始
  めとする炎症性疾患の症状改善にも効果があるといわれている。 











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