京 都 と 寿 寿 ・ 朱 雀 錦
            (5)「寿司種・あなご」


                   アナゴ


                        アナゴ
 アナゴは、ウナギ目アナゴ科に属する魚類の総称。 ウナギによく似た細長い体形の海水魚30以上の属と150以上の種類が知られる。 好みの環境や水深は種類によって異なり、砂泥底、岩礁域、浅い海,深海と様々な環境に多種多様な種類が生息する。
1.分類
  脊索動物門脊椎動物亜門条鰓綱新鰓亜綱カライワシ上目ウナギ目アナゴ亜目
  ・アナゴ科クロアナゴ亜科アナゴ属マアナゴとなる
  ウナギ目 ┬ ウツボ亜目(3科24属、207種)
              ├ ウナギ亜目(3科5属29種)
              └ アナゴ亜目(9112属555種) ┬ その他(7科)
                                                            ├ ハモ科(6属15種)
                                                            └ アナゴ科(3亜科32160種)
  アナゴ科は3亜科、32160種で構成され、世界中の熱帯・亜熱帯海域に分布する。 側線は完全で、
 ほとんどの種類は胸鰭をもつ。

  ・チンアナゴ亜科         シンジュアナゴ属、チンアナゴ属等2属
  ・ホンメダマアナゴ亜科 ゴテンアナゴ属。メダマアナゴ、その他3属
  ・クロアナゴ亜科     クロアナゴ属等25属で構成される。 背鰭・尻鰭の鰭条には分節があり、発達
   した胸鰭をもつ。
     ・アイアナゴ属
   ・キツネアナゴ属
   ・ギンアナゴ属
   ・クロアナゴ属 (マアナゴ、クロアナゴ、キリアナゴ、ダイナンアナゴ)
   ・ヒモアナゴ属

2.マアナゴ
  アナゴ科は約32150種が知られ、熱帯から温帯までの海に広く分布する。 好みの環境は魚種によって異なる。 日本近海には1527種が生息する。 体型は、細長い円筒形で、ウナギに似ているが、最大の違いは鱗がないことです。
(1) 生物学的特長 
   マアナゴの特徴は以下の通りです。
  @ 体は太いか、中庸、胸鰭は大きい。
  A 後鼻孔は眼の中央か、それより上方にある。 背鰭と尻鰭の鰭条に分節がある。  肛門より前の長さはや
   や短く全長の3045%、上唇に沿う溝がある。

  B 下顎は中庸、閉口時でも前上顎骨歯は露出しない。 主上顎骨歯はほぼ一列。 上記はクロアナゴ属
   共通の特徴。 マアナゴが他のクロアナゴ属と異なる点は。

  C 側線の孔数は3943でこの各孔は白色。 側線の上方にも白点の一列がある。 叉、 頭部にも白点が
   散在する。

    マアマゴは「はかりめ」とも呼ばれた。 側線の孔(穴の周縁)が白くなっていて、この白点が丁度棹秤の目盛り
   に見えたからです。

    クロアナゴ属にはマアナゴの他にキリアナゴ、クロアナゴ、ダイナンアナゴが日本近海にマアナゴとともに生息して
   いる。

(2) 分布と生育
  マアナゴは北海道以南、東シナ海、黄海、渤海に分布する。 本種分布の北限は北海道で日本海側が積丹
 し ゃこたん、太平洋側が襟裳えりも岬、南限は東シナ海の北緯30度(上海沖のやや南)と推定されていたが、
 近年  北緯26度(台湾沖)の大陸棚を外れる深みにマアナゴの魚群がいることが確認された。

   マアナゴは卵から孵化すると、葉形仔魚(レプトケファルス)になる。 レプトケファルスは黒潮暖流に乗って日本
 にやって来る。 播磨灘には2〜5月、福島県常盤沿岸には2〜6月、宮城県石巻沿岸には4〜7月と北に行く
 ほど出現は遅くなっている。

  レプトケファルスは春から夏にかけて変態し稚魚となる。 変態前の全長1112p、変態後の全長は7〜8p
 で葉形仔魚より数センチ縮む。 変態には水温14℃でおよそ22日間を要し、変態期の個体は沿岸の礫混じり
 砂底や藻場の周辺の海底で変態お終了し、稚魚期へ移行する。 孵化してから変態が終わるまでおよそ10ヶ月
 かかる。 変態終了後の稚魚はオキアミや
端脚類などの小型甲殻類や多毛類を捕食する。 成長につれてエビ
、 カニ類やシャコ類などの甲殻類、イカ類、タコ類などの頭足類、ハゼ、キス、イカナゴなどの魚類を好む様になる。
 この若魚は内湾など水深10m前後の浅場で生息するが、成長するに従って深場に移行して行く。

  大阪湾での生育調査によれが、マアナゴ1歳雄の全長は27p、雌28p、2歳雄は37p雌38p、3歳雄は45
 p、雌57pであった。
(3)卵と産卵
   アナゴとウナギは共に生態がよくわからない謎に包まれた魚類です。 両種とも自然界で卵と卵を孕んだ親魚も
 発見されず、産卵場も確認されていない。  しかし、ウナギの産卵場については比較的早く推定され、テレビ・ラ
 ジオ等のマスコミで取り上げられていた。   その場所は、東京湾から約2000km南のフィリッピン海の東縁にある
 西マリアナ海嶺。 この海嶺にスルガ、アラカネ、パスファインダーと言う3つの海山がある、ここが日本産ウナギの産
 卵場と推定されている。 この海山は水深30004000mの海底から最も高い頂上は、水面下約10mで富士
 山クラスのやまです。
  マアナゴの産卵場も各種の方法で検討されていたが、近年かなり精度の高い推定ができるようになった。 それ
 はレプトケファルスの耳石から産卵日が推定できる様になったからです。 耳石は、魚体の平行バランスをとる器官
 で体の成長と共に耳石も少しずつ成長します。 耳石を真ん中から切断し、切断面を顕微鏡で見ると丁度木の
 年輪の様な輪文が見える。  この輪文を日輪叉は日周輪と言い1日を意味するので、この日輪の数を読み取り
 逆算すれば孵化日及び産卵日が推定できます。

  各採取海域への来遊(生後)平均日数を同時期(4月)に採取されたレプトケファルスの耳石で調べると熊本は
 103.3
日、宮崎は112.1日、香川は125.4日、静岡は131.1、福島は122.5日である。 この日輪と採取日から逆
 算すると孵化日は8月から翌年の1月の半年に渡り、そのピークは1012月である。

  日本近海で採取されたレプトケファルスや韓国済州島沖や東シナ海で採取したレプトケファルスの耳石のデータ
 から推測すると、日本産マアナゴの産卵場はマアナゴの南限である北緯26度の台湾沖になると言う。 北緯30
 (上海沖のやや南)以南の大陸棚にはマアナゴの魚群は見当たらず、しばらく無生息海域が続いた後、北緯26
 度の台湾沖の大陸棚を外れ深みに忽然とマアナゴの魚群が現れる。 しかも、ここの魚群は大陸棚の魚群とこと
 なり大型マアナゴが主で、この場所が、日本産マアナゴの産卵場と推定されている。

  産卵期は生殖腺指数(GSI)及び生殖腺発育状態で推定され、GSIは下式で計算される。
    GSI = 生殖腺重量×100÷体重
  愛知県渥美郡赤羽根町の水深6〜10mの海域で漁獲された全長2981pの182個体のGIS値は大半が1
 以下叉1で、2以上は10〜1月の期間のみ出現した。 また、より沖合いの水深90100mで漁獲した5個体(
 全長6477p)のGSI1.16.3であった。 この様に成熟すると沿岸浅場から沖の深場に移動すると考えられ
 る。

   日本近海の沿岸域は若魚が多く、産卵出きるほど成熟した親魚はいないと思われる。 成熟魚は何処に行
 ったのであろう。 ウナギは産卵のため2000kmの旅をすると推定されている。 

 東経135度の神戸沖から、産卵場と推定される台湾沖まで、地図上で測定すると約1500kmある。 マアナゴが
 産卵のため1500kmの旅に出ても不思議でないのではなかろうか。

(4)レプトケファルス
  通常の魚類の分類とは別に仔魚の形態だけに視点を当てた仔魚分類がある。 この分類によれば、レプトケファ
 ルスを作る魚類は、カライワシ類に入り、この類には、カライワシ目、ソトイワシ目、ウナギ目、フウセンウナギ目の4
 目がある。 アナゴはウナギ目に入り、アナゴのレプトケファルスはうなぎ、ハモと同様、平たく、細長く、透明である。
 海水を体内に取り込み体液濃度は海水とほぼ同じ(3%)であるため、通常の魚が行う、浸透圧調整機能は不
 要で、柳葉形状の体型は浮遊性に優れ、省エネルギー形で長旅に適している。 

   レプトケファルスの透かして見える消化管は常にからで、さまざまな動物性プランクトンを与えても捕食しないこと
  から、食性が謎に包まれていたが、最近マリンスノーを捕食していることが判明した。

  「マリンスノー」は北海道大学の研究者達が潜水球「くろしお号」で海底の調査を行った時、海中の懸濁物がラ
 イトに照らされて白っぽく、雪のように見えたことから、彼らはこれをマリンスノーと名づけた。 現在では世界中でこの
 言葉が使われている。 

  このマリンスノーは、プランクトンの死骸やプランクトンが捕食のために分泌するゼラチン状物質等生活廃棄物であ
 る。 これをピントに人工飼料が開発され、ハモのレプトケファルスにはエビのすり身、ウナギはサメの卵黄を原料とし
 た人工飼料だ餌付けに成功している。

(5)漁獲量
     表1 東シナ海・黄海及びに日本近海のマアナゴ漁獲量 (単位;トン)

1975

1978

1980

1983

1984

1985

1987

1988

1989

韓 国

7343

6931

9575

8631

12547

23881

19839

19216

22994

東シナ

2802

968

903

785

805

1014

889

739

827

日 本

4663

3336

4880

4613

4858

7187

5110

6682

6228

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1667

 

韓 国

20871

21127

23005

29674

21579

19536

17274

18896

 

東シナ

902

1054

1207

977

913

751

528

344

 

日 本

4790

4990

5931

5900

12007

12978

 

                             表2 マアナゴの漁獲量と価格          (単位;トン、円/kg

 年

平成10

11

12

13

14

15

16

17

水揚量

3452

3362

3118

3447

3613

3024

3972

4661

価 格

717

646

612

605

577

533

426

367

表3 マアナゴの産地別漁獲量(平成17年度)
         産    地  漁獲量
   北海道太平洋北区                           21 トン
   太平洋北区(青森県青森〜茨城県大洗)           2967 〃
                (石巻)                  (2383 〃)
   太平洋中区(千葉県銚子〜三重県尾鷲)            601 〃
   太平洋南区(和歌山県勝浦〜宮崎県油津)            33 〃
   北海道日本海北区                            1 〃
   日本海北区(青森県青森〜富山県氷見)               2 〃
   日本海西区(石川県小木〜島根県益田)            329 〃
   東シナ海(山口県下関〜沖縄県石垣)              360 〃
   瀬戸内海区(大阪府泉佐野〜大分県別府)           346 〃
          合     計                     4661 〃
   東シナ・黄海海域からの韓国漁船による漁獲量は19751983年までは69309600tの範囲にあったが、そ
 の後漁法の変更(述縄漁法かご法)等により漁獲量を伸ばしたが、1993年の29600tをピークに減少している。
  これはマアナゴ資源の減少によるものと考えられている。 一方、この海域で活動していたわが国の以西底引き
 網の漁獲量は1975年に2800tあったが、1997年には、ピーク時の約8分の1である350tまで減少した。

   この原因は、@魚群の主流が以西底引き網の操業海域から外れる深みに移動したと考えられること。 A
 漁に伴う、漁船の減船。 Bマアナゴ資源の減少。 の3つが原因とかんがえられる。  日本近海での漁獲は、
 太平洋側が主体で、太平洋北区一番多く、特に石巻だけで全漁獲量の約50%を占めている。 続いて多いの
 が太平洋中区である。 日本海側は島根県沿岸までで、それより北東ではほとんど取れないようです。

(6) 食品成分
   マアナゴの可食部100g当たりの食品成分は下記の通りです。
      カルシュウム     75mg      ビタミンA     1700IU
      リン        210mg      ビタミンD      110IU
      鉄         0.8mg      ビタミンB1    10.05mg
      ナトリュウム     150mg      ビタミンB2         0.14mg
      カリュウム     370mg           ビタミンC                 mg
      マグネシュウム    25mg            コレステロール        160mg
      亜鉛       890μg            エネルギー           169kcal
      銅          48μg           蛋白質           17・3g
      水分          71g             脂質           10.2g
      灰分        1.59g
  マアナゴはビタミンAが豊富で、魚類ではウナギ、ハモに次いで多い。 また、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA
  (エイコサペンタエン酸)などの高度不飽和脂肪酸も多い。

(7)アナゴ雑学
  1) 日本近海にマアナゴの産卵場がある?
    日本産マアナゴの産卵場は台湾沖と推定されているが、駿河湾で小さなレプトケ  ファルスが1個体捕獲さ
    れている。 これは孵化後間もないベビーレプトケファルスで  たったため、日本近海、それも駿河湾すぐ近く
    に産卵場があるのではないかとささやかれている。
  2) マアナゴは何歳までいきられる
    日本産マアナゴは、成熟すると、沖の深みに移動し、やがて生まれ故郷へ旅立つと考えられていた。 しかし
    、 全部が旅をするのではなく、一部は日本に永住する物がいるようです。 最高13歳マアナゴが漁獲されて
    いるようです。

  3) マアナゴ資源が危ない
    「のれそれ」は土佐地方で始まった食習慣で、マアナゴのレプトケファルスをポン酢等につけ踊り食いにするもの
   で、珍味として全国的に広まりつつあるようです。 常盤海域では、1990年頃より始まり年2030トンのマア
   ナゴのレプトケファルスが漁獲され、常盤海域では、その影響で漁獲量が減少していると言う。 世界的にマア
   ナゴの資源が減少傾向にあるおり、漁業資源の確保の立場から、このような食習慣は慎むべきではなかろう
   か。

 

 

 

 

 





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