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1・塩の製造
塩は、自然界では、海、鹹湖かんこ(塩湖)、鹹泉かんせん(含塩地下水)及び岩塩に、食塩(NaCl)
を主成分とし、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSo3)等の混合物として存在する。
川・雨 蒸気 川・雨 蒸気 岩塩
↓↑ ↓↑ ↓
[鹹湖(塩湖)] [ 海 ] [岩塩] [鹹泉]
塩採取の主な採取方法は
岩塩採掘 …………………………………………………………… 岩塩
┌在来式塩田(揚浜、入浜)
┌自然蒸発法 ┼自然濃縮装置(枝条架式)
┌蒸発法 ─ ┤ └天日塩田
製塩法 ┤ │ ┌直火熱利用─平釜式
│ └煎熬法── ┼蒸気熱利用┬多重効用缶法
├凍結法 │ └加圧式
│
└温泉熱利用
└濃縮法 ─ …………………………………………イオン交換膜法
現在、世界的な塩の採取方法は、(1)岩塩鉱山から岩塩としての採取と(2)天日塩田であるが、日本は雨が多く、天日塩田
が出来ないため、日本独特な方法をして、イオン交換膜・多重効用缶法を採用している。
(1) 岩塩採掘
岩塩は、地殻変動で海水が陸に閉じ込められ、長い年月をかけて結晶した
もので、いわば、数億~数千年まえの海の化石です。世界的には英国のチェシャー岩塩、ポーランドのヴェリチカ岩塩、
サハラ砂漠のマリ岩塩、パキスタンのパハール岩塩が有名である。ポーランドのヴェリチカ岩塩は、10世紀ころから掘り
始められたヨーロッパ最古の岩塩鉱山で千年を経る現在も掘り続けられ、その坑道の長さは250kmにもよび、最盛期
の17~19世紀にはポーランドの国家予算の30%を確保する重要な産業であったと言う。 岩塩鉱は強固で安定している
ため、炭鉱の様に崩壊の恐れがなく、日本の大谷石の採取と同じルームアンドピラー法(支柱の役割をする部分をのこ
し、四角の部屋分を破砕し採取する)が主体で効率の良い採取が可能である。 (2)天日製塩法
海水中の塩濃度は平均3.5%(食塩は2.72%)といわれるが、海洋の大きさと、河川の流入量により、多少ことなり、太
平洋、大西洋、インド洋では3.5%であるが、地中海は3.6%、紅海では3.9%である。しかし、海水中に含まれる塩類濃
度は高々3.5~4.0%で大半が水である。太陽エネルギーは地面に直角に投射された場合、1cm2、1分間1.95カロリー
の熱を与える。この太陽エネルギーを利用して水分を蒸発させ、塩類分を取り出すのが天日製塩法である。
製塩地の気候的条件としては、①気温が高く、②湿度が低く、③風が強く、④降雨量が少なく、⑤晴天が続くことであ
る。我が国の最も降雨量の少ない瀬戸内海で1000~1500㎜と多くかつ晴天が続かないため天日製塩は不可能である
。地中海地方は古くからの製塩地で、イタリア、フランス、ギリシャなど海岸の降雨量は800㎜から600㎜、スペインは
100~200㎜、北米カリフォルニアは500㎜、紅海は50ミリと製塩地の降雨量は少ない。一方、台湾は2000㎜と日本より
多雨であるが、雨季と乾季がはっきりと分かれているためむしろ適地となっている。塩田は海辺に構築する。まず海水を
入れる貯水池、これに続いて蒸発池と結晶池からなる。
① 海水の取り入れには、自然流下式と汲揚式がある。自然流下式は、干満の差を利用して海水を取水するため海水
を汲上げるための費用はいらないらないが、塩田の構築費は高くなり、採塩後の母液の排水作業が必要となる。汲揚
式は海水の汲上費用はいるが塩田構築費は少ない。
② 貯水池 海水を貯え潮の干満の影響を受けないで製塩作業が出来るようにするためのの池。塩田の20%位の面
積をとり水深60~70センチ。自然流入式は海に面して築いた堤に設けた水門から海水を取入れる。貯水池の海水は
、これに連続している蒸発池に落差によって自然流下させる。
③ 蒸発池 蒸発池は塩田の主要な役割を果たすところで、蒸発池の面積は全体の40%を占める。この
池は下段に行くにつれて小さくなる、下段の面積は、前部門のの約8割となる。段毎に数センチの落
差をつけ海水が自然に流下するようにしてある。蒸発池に張られた海水の深さは5~6センチが多い
が、塩田によって異なり、東洋では3~5センチ、地中海では10~15センチと気候条件により異なる
蒸発池で水分が蒸発し、下段の方に行くに従い濃くなり、最後はBe´(ボーメ)20~24度となる。し
かしこの程度では沈殿は生じない。
④ 調節池(塩田によっては省略する場合がある)
蒸発から濃厚になった鹹水かんすい(塩辛い水)をここに導入し、結晶池から排除された母液と混
合する。母液の中にはまだ塩分が残っており、 塩濃度が上昇するため硫酸石灰(CaSO4)が析出し
、沈殿する。調整池は硫酸石灰除去工程である。
⑤ 結晶池 飽和に近い濃厚な鹹水を導入し、塩を結晶させる。この池も蒸発池同じ様に幾段にも仕切
られ、その段ごとに3~4センチの落差がある。結晶池の広さは全体の20%程度である。区切られ
た1つの結晶池は小さいものは10m2、大きいものは25m2くらいである。蒸発池で飽和濃度に達しな
かった「にがり」成分は、母液と称し、排水溝に投入され排除される。
2・日本の塩田今と昔
温暖な地理的環境にある日本には太古から人(明石人等)が集まり住み、古代エジプト時代(BC3000~BC31)や古代イン
ダス文明(BC2300~BC1700)より古い、1万2千年前に世界最古の土器をもつ縄文文化(縄文式時代)が始まった。長い間
、稲作の始まりは弥生時代(BC300~)からとされていたが、最近の考古学の研究から縄文時代の晩期(BC1000~BC300年
)に始まったと推定されてい1る。
鳥獣、魚介類を主食にしていた狩猟時代にはそれほど必要としていなかったが、農耕がはじまり植物性食物の比重が高くな
ると、ミネラルバランスの関係から食塩の補給がどうしても必要になる。我々の祖先も何らかの方法で食塩を確保していたと考
えられる。
日本には岩塩鉱山はない。 また日本は世界で最も雨の多い国で、かつ晴天は続かない、世界で最も塩を獲得するのが難
しい国である。我々の祖先は苦労したと考えられる。
(1)藻塩法(土器製塩)
万葉集に「藻塩焼く」、「藻塩刈る」、「藻塩たる」が散見することから、海草を海から刈り取 り、乾燥し、これに海水を
注いで乾かし塩分を濃くし、これに点火して焼き、塩分の多いその 灰を叉はその灰にさらに数回海水を注いでは乾か
した含塩灰を海水に溶かし、上澄みをろ過して鹹水を得、土器で直火煮して採塩したと推定される。この製塩法を「藻塩
法叉は土器 製塩」と言う。 縄文時代の遺跡からも煎熬土器が発掘され、師楽式土器等製塩土器は全 国から出土し
ていることよより全国的に普及していたものと考えられている。数百年続いた 藻塩法も、砂を用いた効率の良い揚浜
塩田が現れると8世紀頃から順次衰退していった。
(2)揚浜塩田
塩田法は海水を導入して、塩田上の砂面から蒸発させ、塩の結晶を砂の上に付着させ、これを海水叉は薄い鹹水に
溶かし、濃い鹹水を獲得し、これを加熱して水分を蒸発させて塩を得る方法である。海水を汲み上げ塩田に注ぐ方法を
揚浜塩田と言う。揚浜塩田は、自然の浜を利用した自然揚浜と人工的に構築した塗浜揚浜塩田がある。
塗浜塩田は海岸の砂洲を平面にして粘土を突き固めて不浸透性地盤をつくり、その上に撒砂をまいて構成される。早
朝海水を汲み上げて散布し十分に撒砂に海水を含ませおくと太陽熱によって撒砂中の水分が蒸発し、撒砂に塩分が付
着する。この砂を集めて沼井ぬいと称する浸出装置に入れ上部から海水を注いで塩分を溶出させて濃厚鹹水採取する
方法である。
(3)入浜塩田
入浜塩田の初期的なものは、9世紀中期に見られるが、江戸時代初期正保2(1645)年に赤穂で始めた入浜式塩田
は、我が国で独自の発達を遂げた製塩方式であり、広大な土地と高度な技術をもち瀬戸内海地方を中心に普及した。
入浜塩田は遠浅の干潟地に堤防を造り、干拓して、内部の広大な砂地を平らにし、満潮・干潮の中位に塩田面を築く。
約15m間隔に細い海水溝(浜溝)を設けて長方形の浜地盤を区画し、その中心線に約15m間隔で沼井を配置した。干
満を利用して導入された海水は、浜溝から浜地盤へ浸透し表層の撒砂に達する。砂面で水分が蒸発すると、海水は毛
管水として地盤から補給される。こうして塩分が十分付着した撒砂(鹹砂)を沼井に集め、海水を注ぐと濃い鹹水が滴下
する。入浜式塩田は1.5~2haの浜地盤と釜屋1軒をもって1軒前と言う作業単位を構成し、年産100トン/ha程度である
。
(4)煎熬法
塩田法は前工程の揚浜及び入浜塩田で得た鹹水を後工程の煎熬工程で煎熬(汁が無くなるまで煮詰める)することに
より採塩する。煎熬法の初期の段階では①あじろ釜、②土釜、③石釜であったが、後ほど④鉄釜が現れると鉄釜(平釜
)に代わった。
塩田で集られた鹹砂は沼井で海水で洗い鹹水(Be14程度)として回収する。
鹹水はまず平釜の余熱釜に入れられる。蒸発釜を加熱した炎と煙は余熱釜を加熱して煙突に抜ける。余熱釜で昇温さ
れた鹹水は余熱釜に入り、蒸発して濃縮し、まず始めに石膏(CaSO4)が析出して浮上するので、これを除去する。更に
煎熬を続け濃度がBe27程度になると食塩(NaCl)の結晶が現れる。濃度Be33~34程度になった時点て煎熬を中止す
る。この停止のタイミングが非常に重要で遅れるとにがり分が塩に入り品質が悪くなる。
(5)江戸時代の塩田
塩は米と並び各藩の収入源で、特に反当たりの収穫は米より大きかったため、各藩は領内の塩田者を積極的に保護
育成した。そのため塩田は全国に普及した。しかし、瀬戸内海地方は、雨も比較的少なく気候的、地形的に立地条件に
優れていた上赤穂藩が開発した当時としては画期的な製塩法である入浜式塩田を採用していたため圧倒的に優位で
あった。例えば、文化・文政頃の全国年間製塩高は425~500石であったが瀬戸内海十州はその約9割に当たる382~
450石で塩田者は2100軒であったと言う。
(6)日本の塩専売制度
明治維新になると、藩の保護が無くなった地方の塩田者は特に困窮し、さらに外国の岩塩や天日製塩が入って来ると
、国内塩田者は窮地に追い込まれた。そこで、安い海外塩で塩の全需要を賄うか国内塩田者を保護するか世論が二分
された。
そこへ明治37(1905)年日露戦争が始まった。そこで戦費を確保することが目的であるが国内塩田者保護を名目に明
治38(1906)年塩専売制度か可決決定した。塩専売制度施工後は、塩製造人が生産した塩は全て期取り納入価格は、
生産原価に一定の利潤を加えた価格とした。専売事業は独立採算制であるため安い外塩を吸入にてバランスをとった。
(a)第一次塩業整理(明治43年)
明治40年頃より供給が需要を上回り、在庫が増え赤字となったため、製造コストの高い揚浜塩田と古式入浜塩田整
理する第一次塩業整理を明治43年に実施した。
製造者数
|
25,761-13,402=12,359人
|
製造所数
|
13,092-5,796=7,295所
|
塩田面積
|
7,860-1,770=6,090ha
|
生産量
|
594-65=529千トン
|
従業員数
|
105,816-41,248=64,568人
|
(b)第二次塩業整理(昭和4年)
植民地(第一次大戦にて青島がドイツから日本に移る)、外国塩等が
低廉大量に輸入されるように
なり、不良塩田を淘汰
製造者数
|
3,958-568=3,390人
|
製造所数
|
3,537-103=3,434所
|
塩田面積
|
5,741-1,169=4,572ha
|
生産量
|
643-90=553千トン
|
従業員数
|
46,396-8、613=37,783人
|
(c)第三次塩業整備(昭和34年)
過剰在庫解消策として40万トンの生産能力を除去
製造者数
|
3,587-1,372=2,215人
|
製造所数
|
306-270=36所
|
塩田面積
|
4,968-2,005=2,963ha
|
生産量
|
1,337-404=933千トン
|
従業員数
|
10,318-5,877=4,441人
|
(d)第四次塩業整備(昭和46年)
新技術(イオン交換膜法)による製造方法への転換を基本に、塩の価
格を国際水準へや寄せし塩業
自立化の基盤を醸成
製造者数
|
1,789-1,782=7社
|
製造所数
|
28-21=7所
|
塩田面積
|
2,215-2,215=0ha
|
生産量
|
1,805-673=1,122千トン
|
従業員数
|
4,216-3,068=1,148人
|
(7)イオン交換膜製塩法
海水には3.5%の塩類が溶存し、残りの96.5%が水である。
イオン交換膜電気透析による海水の濃縮は、これまでの塩田法や煎熬法が水分を蒸発させる方法であうのとは逆に
、目的とする塩類を集めて取り出す方法です。 原理は1949年W.Judaが発表しましたがイオン交換膜価格(膜の価格と
寿命)が大きな壁でした。 昭和25(1950)年頃から研究を開始、昭和41(1966)年実用化試験、昭和47(1972)年実用
化された。 広大な塩田が不要、天候にも左右されず、経済的に能率よく優れた品質の塩が生産できる、日本が世界に
誇れる画期的な製塩法です。
イオン交換膜法の原理
イオン交換膜法は陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に入れ両端にプラス電極とマイナス電極を
置きます。 今仮に右に陽極、左に陰極を置くと(上図)とする。 左の陰極室右壁は陽イオン交換
膜となる。 この状態で電流を流すと第一室の Na+,Mg++,,KCa++,K+等プラスイオンは陽イオン交換膜
を透して陰極室に入り、Cl-イオンは陰イオン交換膜を透り第二室に移動します。 ただし、SO4-イ
オンは分子が大きく陰イオン交換膜を通過出来ないため第一に残ります。 また陰極室のCl-イオンは
陽イオン交換膜を透れませんので陰極室残ります。 即ち、陰極室、第二室、陽極室は濃海水、第一
室、第三室は薄い海水になる。
従来の塩田法で得られる鹹水はBe14度位であるが、イオン交換膜法ではBe18度程度まで濃縮できる
。
*ボーメ度とは、ボーメ比重計の示度である。水より比重の小さい軽液の場合、食塩水の10%溶液を
0Beとし、純水を10Beとしてこの間を10等分している。水より比重の重い重液の場合は純水を0Be
とし、食塩の15%溶液を15等分している。
こうしてできた鹹水は真空式蒸発缶(多重効用缶)に送られ、煮詰められて、塩の結晶になります
。
多重効用缶の原理は下記のとおりです。
①
1号缶(1気圧)の100℃水蒸気が2号缶(0.5気圧)を温め、2号缶の80℃水蒸気が3号缶へと順
に温めていく構造です。
②
4号缶の水蒸気に海水をかけ冷やし、蒸気が水に戻る時に体積が小さくなることを利 用して、4号
缶の中に真空に近い状態(0.07気圧)を作り出すことが出来ます。
③ 4号缶でできた真空に近い状態を利用して、3号缶、2号缶の気圧も下げ、適切な気 圧にコント
ロールします。
④ 気圧がうまく調整できると、1号缶を沸騰させるために作り出した水蒸気(2気圧、120℃)の熱
だけで、全ての蒸気換を沸騰させ、塩の結晶をとることができるため、燃料が大幅に節約できます
。
*
メンテナンスなどで運転を停止した後、再開する時だけ真空ポンプを使います。
イオン交換膜法で得た鹹水(Be18)を多重効用缶に入れ加熱蒸発すると、Be27°内外で食塩の結晶
が出はじめ、Be34~35°以上になると詰まりが生じ取出しが困難になるためBe33~34程度までで採
塩をやめます。 食塩とにがりの入った残液は苦汁槽に送ります。
地域
|
外 国
|
日 本
|
東アジア
(北部)
|
東アジア
(南部)
|
欧州
(地中海)
|
紅海沿岸
|
入浜塩田
|
流下式
塩田
|
イオン
交換膜法
|
生産能力
|
50t/ha
|
80t/ha
|
70t/ha
|
200t/ha
|
100t/ha
|
300t/ha
|
|
価 格
|
15,600円(輸入価格)-1,600円(輸送費)
|
|
|
14,800円/t
|
3・塩の種類と用途
表3-1世界塩用途別需要表(1991年) 単位;千トン
用途
|
塩素/苛性ソーダ
|
ソーダ灰
|
その他科学
|
道路解凍
|
食用
|
その他
|
合計
|
量
|
69,950
|
35,450
|
6,600
|
22,100
|
37,400
|
18,900
|
189,400
|
%
|
36.9%
|
18.7%
|
2.9%
|
11.7%
|
19.8%
|
10%
|
100%
|
表3-2日本の消費塩の区分(1996年)) 単位:万トン
種類/用途
|
一般用塩
|
ソーダ
工業用塩
|
合 計
|
家庭用
|
食品工業
|
食料用計
|
一般用塩計
|
精
製
塩
|
国
内
塩
|
食塩
|
9.4
|
5.8
|
25.2
|
27.1
|
|
27.1
|
並塩
|
8.2
|
31.7
|
39.9
|
46.0
|
|
46.0
|
特例塩
|
|
40.4
|
40.4
|
63.2
|
|
63.2
|
国内塩計
|
27.6
|
78.0
|
105.6
|
136.3
|
|
136.3
|
輸
入
塩
|
食卓塩
|
0.7
|
|
0.7
|
0.7
|
|
0.7
|
精製塩
|
1.7
|
3.4
|
5.1
|
6.9
|
|
6.9
|
漬物塩
|
0.3
|
|
0.3
|
0.3
|
|
0.3
|
再生塩計
|
2.7
|
3.4
|
6.0
|
7.9
|
|
7.9
|
非
精
錬
|
粉砕塩
|
1.0
|
7.1
|
8.0
|
18.9
|
|
18.9
|
原塩
|
1.8
|
12.4
|
14.0
|
26.7
|
748.0
|
770.6
|
輸入塩合計
|
5.5
|
22.9
|
28.3
|
53.6
|
748.0
|
802.5
|
合計
|
33.1
|
100.8
|
139.9
|
189.9
|
748.0
|
937.8
|
(1)食用
塩は食料として欠くことのできないものであり、我が国でも古来から「米塩」などと言う言葉があるとおり、米と並び称せ
られるほどである。この食料として我が国で使用されている塩は年間約100万トン(表3-2)である。
一体、我々はどの程度、食料として塩を要求するのか、日々の生活のためには、毎日20gの塩を採取する必要がある
と言われる。すると年間約7.3kgである。これは塩のままではなく調味料その他の形で体内に入る。この外食品の塩蔵
のための処理などに塩を必要とするのでこれらを含め1人当たり年間10kgとすると、我が国では100万トン食料関係に
要する計算となる。この数字は上記と一致する。
味をあらわすものの種類のうち、甘味、苦味、酸っぱい味は濃度を薄めていくと旨味にに近づく、しかし塩の塩味は濃
度を変えても変わらない単味である。一方、この塩味は他の味と共存すると、その味をその味を一層強めるような相関
関係があることが良く知れれている。またパンやうどんにも塩を入れる。こけは塩が蛋白質の粘りを強化する特徴がある
と言う。塩を入れることにより、パンはふっくらと焼き上がり、うどんは腰が強くなると言う。このように色々な食品に添加さ
れている。塩の用途別消費量と食品の塩の添加量の一例を揚げてみる。
表3-3用途別食塩消費量(1963年) 単位;トン
|
家庭
|
漬物
|
味噌
|
醤油
|
水産
|
調味
|
麺類
|
加工食品
|
パン
|
合計
|
食卓塩
|
2,487
|
|
|
|
|
|
|
|
|
2,487
|
特級精製
|
856
|
|
16
|
|
2
|
615
|
|
491
|
187
|
2,171
|
精製塩
|
12,842
|
105
|
27
|
107
|
326
|
1,480
|
818
|
9,846
|
1,889
|
27,825
|
食塩
|
162,733
|
2
|
27
|
2
|
|
|
|
2
|
|
162,766
|
缶詰用
|
|
|
|
|
|
|
|
301
|
|
301
|
上質塩
|
333,741
|
101,348
|
66,617
|
109,165
|
48,939
|
15,271
|
13,241
|
23,129
|
4,257
|
716,438
|
格外白塩
|
185
|
2,983
|
594
|
2,093
|
393
|
60
|
67
|
156
|
13
|
6,547
|
輸入塩
|
107
|
2,461
|
90
|
102,408
|
51,720
|
11
|
1
|
|
|
156,800
|
合計
|
512,951
|
106,899
|
67,371
|
213,775
|
101,380
|
17,414
|
14,127
|
33,915
|
6,324
|
1075,335
|
表3-4食品に含まれる食塩含有量
単位;g/100g
食品名
|
NaCl
|
食品名
|
NaCl
|
食品名
|
NaCl
|
食品名
|
NaCl
|
食パン
|
1.22
|
醤油
|
18.03
|
サラミソーセイジ
|
3.81
|
さけ新巻
|
6.35
|
干めん
|
3.81
|
ウスターソース
|
7.62
|
プロセスチーズ
|
4.06
|
塩鯖
|
4.06
|
干そば
|
1.78
|
トンカツソース
|
4.82
|
粉乳全脂
|
0.95
|
たらこ
|
6.60
|
コンフレーク
|
1.65
|
トマトケチャップ
|
3.05
|
粉乳脱脂
|
1.19
|
練ウニ
|
7.11
|
せんべい甘
|
1.52
|
マヨネーズ
|
2.54
|
魚肉ソーセイジ
|
2.54
|
昆布巻
|
3.81
|
せんべい塩
|
1.93
|
ロースハム
|
2.29
|
魚肉ハム
|
2.79
|
昆布佃煮
|
13.72
|
バター
|
1.98
|
プレスハム
|
3.05
|
かまぼこ
|
2.54
|
梅干
|
23.88
|
マーガリン
|
2.41
|
ベーコン
|
2.51
|
ちくわ
|
2.41
|
沢庵
|
10.16
|
甘味噌
|
5.31
|
ソーセイジ
|
2.24
|
干あじ
|
3.05
|
奈良漬
|
2.79
|
赤味噌
|
11.68
|
ウインナ
|
2.16
|
めざし
|
3.30
|
野沢菜漬
|
3.81
|
(1) ソーダ工業塩
ソーダ工業
┌───────┴────┐
ソーダ灰工業 電解ソーダ工業
│ ┌─────┼─────┐
ソーダ灰 苛性ソーダ 塩素 水素
ソーダ工業の概略は上図のとおりである。
塩の用途は多様であり、用途数は焼く14,000もあると言われている。世界の塩の用途別需要(表3-1)
を見ると、塩素/苛性ソーダ用で40%、これにソーダ灰その他を加えると約60%になる。 食用は20%に
過ぎない。
(a)苛性ソーダ(NaOH) 基礎工業薬品の一つである。 強アルカリ性化学物質であその特性う生かした広
い用途使用されています。 例えば、紙・パルプ工場ではパ婁プの溶解、石鹸や洗剤の製造、ボーキサイ
トからアルミニウムの原料であるアルミナの取り出しにも使用される。
その他炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(NaCO3)、硫酸ナトリウム(NaSO4)、シ
アン化ナトリウム(NaCN)、硝酸ナトリウム(NaNO3)等ナトリウムの化合物として利用されている。
(b)塩素 単体(塩素ガス)は、常温常圧では特有の臭いを有する黄緑色気体である。強い漂白・殺菌作用
をもつため、パルプや衣類の漂白、水道水やプールの殺菌剤として使用する。ただし塩素ガスは消毒効果
は強いが猛毒で管理が難しいため水酸化ナトリウム水溶液に化合さ消毒効果は低いが安全性の高い次亜塩
素酸ナトリウムの二つの使用方法両方がある。 塩酸(HCl)、次亜塩素酸(HClO)、亜塩素酸
(HClO2)、塩素酸(HClO3)、過塩素酸(HClO4)の各種組み合わせによる無機化合物や塩化ビニルや
塩化ビニリデン等多くの有機塩素化合物がある。
(c)水素 水素は燃やしても有害物を出さないことから、代替エネルギーとしてきたいされている。 内燃
機関の燃料として水素エンジンを積んだ水 素自動車が発売せれている他ロケットの燃料や燃料電池に使
用されている。 また、最も安価でクリーンな還元剤として、塩酸の製造、金属鉱石の還元、油脂の改質
、脱硫など、多方面にりようされている。
(d)ソーダ灰(NaCO3) ガラスの原料として大量に使用されている。 ソーダ灰を使用するガラスをソー
ダガラスという。 水の吸収剤としても 利用されている。
4・塩の種類と成分
表4-1国内製品の分析例(2000年) (出展;日本たばこ産業)
|
水分
|
不溶解分
|
SO4
|
Ca
|
Mg
|
K
|
NaCl
|
並塩
|
1.39
|
0.00
|
0.03
|
0.06
|
0.07
|
0.14
|
97.69
|
食塩
|
1.10
|
0.00
|
0.03
|
0.02
|
0.02
|
0.09
|
99.61
|
精製塩
|
0.01
|
0.00
|
0.00
|
0.00
|
0.00
|
0.00
|
99.99
|
新家庭塩
|
4.74
|
0.00
|
0.05
|
0.13
|
0.18
|
0.29
|
93.43
|
原塩(天日塩)
|
1.95
|
0.01
|
0.12
|
0.02
|
0.02
|
0.02
|
9762
|
表4-2外国製品の分析 (出展;日本たばこ産業)
|
水分
|
不溶解分
|
SO4
|
Ca
|
Mg
|
K
|
NaCl
|
イギリス
|
0.01
|
0.00
|
0.02
|
0.00
|
0.02
|
0.01
|
9989
|
フランス
|
0.02
|
0.00
|
0.09
|
0.04
|
0.00
|
0.03
|
99.76
|
ドイツ
|
0.02
|
0.22
|
0.31
|
0.19
|
0.01
|
0.05
|
99.09
|
中国
|
0.38
|
0.05
|
0.30
|
0.14
|
0.02
|
0.02
|
98.93
|
タイ
|
1.54
|
0.15
|
0.49
|
0.12
|
0.12
|
0.03
|
97.25
|
オーストラリア
|
0.10
|
0.65
|
0.09
|
0.04
|
0.01
|
0.03
|
99.05
|
表4-3市販の塩の成分(製品100g中) 食材辞典
|
NaCl
|
カリウム
|
マグネシウム
|
カルシュウム
|
並塩
|
99.2
|
0.03
|
0.08
|
0.06
|
食塩
|
99.7
|
0.03
|
0.02
|
0.02
|
赤穂の天塩
|
98.1
|
0.04
|
0.47
|
0.05
|
赤穂塩
|
93.0
|
0.06
|
0.36
|
0.13
|
アルプスの塩(岩塩)
|
98.7
|
0.10
|
0.00
|
0.00
|
ゲランドの塩(天日製塩)
|
96.2
|
0.30
|
0.58
|
0.16
|
海水の水分を除いたもの
|
77.9
|
2.10
|
15.5
|
4.00
|
天日製塩は蒸発池でBe20~24度まで蒸発濃縮し石膏(CaSO4)が析出する前に調節池で析出分離した後、結晶池に
送る。 結晶池では食塩(NaCl)が十分析出したであろう頃合を計り残液(母液)を排水溝に流しにがり分の混入を防止し
ている。 煎熬法では、 煎熬の初期段階で析出浮上する石膏(CaSO4)を掬い取って除去する。 煎熬を続けると濃縮
Be27当たりから食塩(NaCl)析出が始まり、濃縮Be33~34までで煎熬 を打ち切り、にがり分の混入を防止する。 イオン
交換膜法ではイオン交換膜による電気透析でSO4イオンを除去した後、鹹水を多重効用缶を開始する。 煎熬法と同様濃
縮Be27当たりから食塩(NaCl)析出が始まり、濃縮Be33~34までで蒸発を打ち切る。
天日製塩法も煎熬法もイオン交換膜法も何れも濃縮分離法であり、原理はまつたく同じである。 ただ分離制度に若干の
差があり、天日製塩が一番純度が低く、イオン交換膜法が一番高くなりやすいと言えるかもしれない。 三種の製塩の成分
分析地をみても、多少の差はあるが、極端な差があるとは言えない。
赤穂の天塩等の加工塩は通常の天日製塩、煎熬製塩、イオン交換膜法塩と異なり、天然 塩(海水の組成比)に近づけ
るためNaCl以外の成分を加えたものであるがが、表4-3の成分比を見ると海水の成分比とは全く異なり、むしろ三種の製
塩の成分比に近い。 これは、天然塩を目標にしたのではなく食味に重点を置いて企画されたものと考えられる。 尚、朱
雀錦では、「赤穂の天塩」を使用しています。
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